今さら聞けない放射能についての質問Q&A

放射能についてわかりやすくまとめた資料です。下の画像をクリックするとダウンロードできます。 (PDF形式:344KB) 完成版・今さら聞けない放射能についての質問Q&A

Q1 そもそも「放射能」って、なんですか?

A. 放射線を出す能力のことです。

Q2 いろいろ呼び名があるようですが、「放射能」と「放射線」、「放射性物質」って違うものですか?

よく例えられる例をあげます。

「放射性物質」= 電球
 
「放射線」 = 光
 
「放射能」 = 光を出す能力
すなわち
「放射性物質」 = 放射線を出す源の物質
 
「放射線」 = 物や生体に影響を与えるほど大きなエネルギーを 持った光や粒
 
「放射能」 = 放射線を出す能力

Q3 「放射線」って何ですか?

物質はすべて「原子」で出来ています。
「原子核」は、オニギリのように粒で出来ています。
粒には「陽子」という粒と「中性子」という粒の 2種類があります。
このうち陽子の個数が変わると、名前も性質も違う別の物質になります。

たとえば、水素の陽子の数は 1個、酸素は 8個、ヨウ素は 53個、セシウムは 55個、ウランは 92個

この陽子の数を「原子番号」といい、その番号順に並べて書いたものが周期表です。
陽子の数が同じで中性子の数が違うと、同じ名前で性質も似ているけれど原子核の重さが違う物質になり、「同位体(アイソトープ)」と呼ばれます。たとえば、ウランの同位体で、原爆や原子力発電の燃料に使われるウラン 235という原子の原子核は、92個の陽子と 143個の中性子で出来ているオニギリのようなものです。
これに中性子をぶつけると、このオニギリが2つに割れ(これを「核分裂」といいます)、中性子がいくつか飛び出します。割れたかけら(これを「核分裂生成物」といいます)がもつ粒の数はさまざまですが、“いびつ ”で不安定なものもたくさんできます。
こうした不安定な原子は、安定になろうとして余分な粒やエネルギーを放出します(これを「原子核の崩壊」といいます)。
これが「放射線」(または「電離放射線」)で、ヘリウムという原子の原子核であるα線、電子のβ線、電磁波のγ線の3種類があります。たとえば、太陽に当たると肌がヒリヒリしたり、日焼けしたりしますが、これは太陽の光がもつエネルギーによるものです。
放射線のもつエネルギーは太陽光よりもはるかに強烈で、ぶつかった相手の化学的性質を変えてしまったり、化学結合を切り離したりします。放射線が人体に危険なのはこのためです。

アルファ線はエネルギーが大きく、粒子が大きいため紙を通過することができません。ベータ線も大きいエネルギーを持ち、アルミなどで遮蔽することができます。ガンマ線は最も透過力が強く、鉛などの重い金属を使用して遮蔽します。

Q4 セシウムやストロンチウムとは、何ですか?

セシウムは原子番号 55の元素で、アルカリ金属です。
ストロンチウムは原子番号 38のアルカリ土類金属です。セシウムは水に溶けにくく、ストロンチウムは水に溶けやすい性質をもちます。セシウム137(以下、Cs137)とストロンチウム 90(以下、Sr90)はウランの代表的な核分裂生成物として大量に生成されます。セシウム 134(以下、Cs134)は原子炉内の反応によって生成されます。東京電力原発事故によって、Cs137と Cs134はおおよそ 1対 1の比率で大気中に放出されました。事故による放出された Sr90の量は地表面で、おおよそCs137の 1/100~ 1/1000ですが、海水中ではより多く見つかっています。

放射性物質(不安定な物質)は放射線を放出して、安定した物質に変わります。Cs137はベータ線を放出して(ベータ崩壊)、バリウム 137という物質に変わります。
Sr90はベータ線を放出して、イットリウム 90という物質になり、イットリウム 90はさらにベータ線を放出して、ジルコニウム 90という物質に変わります。バリウム137、ジルコニウム 90は安定同位体なので放射線を出しません。

セシウムはカリウムと性質が似ており、体内で似たような動きをすると考えられ、筋肉に蓄積されると考えられています。またストロンチウムはカルシウムに似た性質のため、歯や骨に蓄積されます。

Q5 ベクレルとか、シーベルトとは、何ですか?

ベクレル (Bq)は、放射性物質において 1秒間に崩壊する原子の個数として定義された単位です。放射能または放射性物質の量がどれほどあるかを表します。

シーベルト (Sv)は、人体が放射線をどれほどあびるのか、すなわち被ばく線量を表す単位です。

Q6 半減期、生物学的半減期とは、何ですか?

半減期といった場合、通常「物理的半減期」のことを指します。Cs137の物理的半減期は、おおよそ 30年で、これは 30年後に半分の量になるという意味です。さらに 30年たつと現在の量の 1/4に減ります。Cs134の物理的半減期は、およそ 2年です。原発事故時に Cs137と Cs134は、ほぼ 1対 1で放出されました。現在では、Cs134はCs137の 1/3くらいになっています。

生物学的半減期とは、体内から放射性物質が汗、尿、便などから排泄されることによって、半分になる期間のことです。年齢や個人差があります。Cs137の生物学的半減期は、資料にもよりますが、成人ですと 80~ 140日くらい、10歳の子どもで 40日くらい、生後間もない赤ちゃんは、1週間から 10日くらいで、体の中の放射性物質の量が半分になるといわれています。

Q7 高線量被ばく、低線量被ばくの違いを教えてください。

被ばくの人体への影響は、積算(累積・トータル)で考えます。
つまりこれまで放射線を浴びた総量です。
高線量被ばくは 100mSv以上(学者により 250mSv以上)を指し、低線量被ばくとはそれ以下を指すことが多いです。(“年間 ”ではなくトータルであることに注意してください。)

またその他に、高線量率被ばく、低線量率被ばくというものがあります。高線量率被ばくとは、一瞬で大量の被ばくをすることを指し(原子爆弾による被ばく)、低線量率被ばくとは、長期間かけて微量の放射線を浴び続けることを指します。(原発事故による影響)。

Q8 「年間 1mSv」とは、何ですか?

原発事故による放射能拡散の問題では、通常「追加被ばく線量 年間1mSv」という表現が用いられます。
これは原子力基本法という法律のなかで、一般人が自然放射線以外で浴びてもよいとされている限度量です。
これに対して職業人は「追加被ばく線量 年間20mSv」まで浴びてもよいと定められています。しかしこれは、「がまん値」とも呼ばれているもので、年間 1mSvの追加被ばく線量が安全であるという意味ではありません。ちなみに法令で定められている限度量には医療放射線による被ばく量は含められません。

Q9 低線量被ばくの健康被害について、教えてください。

低線量被ばくに関する研究で、近年の調査で明らかになっているものとしては、CTスキャンの検査を行った未成年 67万人を対象とした追跡調査があります(オーストラリア)。
一度も検査を受けたことのない人と比べると 1回の検査(おおよそ5mSv)で、すべてのガンにおいて、発症のリスクが増えることがわかっています。

チェルノブイリ事故の影響調査からは、循環器系、呼吸器系、消化器系の非がん性疾患(ガンではない病気)が増えることがわかってきていますが、その仕組みなどはいまだわかっておらず、議論の途上にあるといえます。

Q10 除染について、教えてください。また郡山の除染の現状はどう思いますか?

除染とは身近な生活圏に降り注いだ放射性物質を別の場所に移動することを指します。その為、“移染 ”というべきだという主張もあります。

平成 26年 1月の「郡山市ふるさと再生除染実施計画」をみると、各戸除染は庭の表土の剥ぎ取りや、高圧洗浄などが行われるようです。除染後も、水のたまる場所、埃のたまる場所がホットスポットになりやすいので、そうした場所を見つけたら再除染をするように市役所に問い合わせてください。
しかし、森林の除染はとても難しいと思います。チェルノブイリ事故では、ヨーロッパ全域に放射性物質が降り注ぎましたが、広大な森林の除染は不可能なのであきらめたという経緯があります。

Q11 ホットスポットって、何ですか? 3年が経過した、今現在も郡山にもありますか?

原発事故初期に、破壊された原子炉から大量の放射性物質が放出し、高濃度のプルーム(放射能雲)が、東日本一帯を覆いました。その時に雨・雪・湿気などで、地表面に高濃度の放射性物質が沈着した場所をホットスポットといいます。
その中でも、マイクロ・ホットスポットといわれる更に高濃度の放射性物質が溜まった場所が、水・埃のたまりやすい場所に形成されていきます。いま現在でも汚染地域では、水・埃のたまりやすい場所にホットスポットが形成されていると思われます。定期的に清掃・除去することが重要です。

Q12 郡山で暮らす中で、空間、土壌、食品などを測定する意味やその方法を教えてください。

空間線量と土壌の測定は、危険な場所を知り、近づかない・除染を依頼するなどのために必要です。
食品の測定は、体内に放射性物質を取り込まないために必要です。
空間線量計は、ガイガー管を使用したもの、ヨウ化ナトリウム(NaI)を使用したものが一般的です。簡易型ですと測定に時間がかかります。 正確な値を出すためには、数回の測定を行い、その平均値をだすのが望ましいです。
空間線量はシーベルトという単位であらわされ、通常、空間線量率(μSv/h 毎時○マイクロシーベルト)で表されます。土壌や食品の測定は、通常、ヨウ化ナトリウム(NaIシンチレーター)や、ゲルマニウム結晶(ゲルマニウム半導体検出器)を使用したものを用い ます。鉛の遮蔽体に覆われた測定室のなかで、時間をかけて測定が行われます。
放射能の量は、ベクレルという単位であらわされます。
土壌・食品の場合ですと、1キロあたり○ベクレル(Bq/kg)と表され、土壌は 1平方メートルあたり○ベクレル(Bq/㎡)に換算されることもあります。

Q13 郡山から、保養に出る意味や効果を教えてください。

放射線防護の基本は、放射線源(放射性物質)から「離れる」「長時間近くで過ごさない」「遮蔽する」の 3つです。保養には放射線をだす物質から遠く離れることによって被ばくを低減する効果があります。
チェルノブイリ事故によって汚染地域となったところの子どもたちは、ベラルーシだと 24日間、ロシアだと 2か月間の保養を行うことが国によって義務付けられています。

Q14 これからも郡山で暮らし続ける私たちにとって、「気を付けること」と「今からでも出来ること」を教えてください。

気を付けることは、線量の高いところに近づかない、長時間の滞在を避ける、家の中の線量を測定し、線量の低い場所に寝室を設ける・移動させるなどがあります。
また、地表面に降下した放射性物質は風によって再浮遊するので、風の強い日はマスクをつける、洗濯物・布団を干さないなどが有効でしょう。

放射性物質は細かい粒子に付着していますから、水や埃のたまりやすいところに溜まります。そうした場所には近づかず、市に除染してもらいましょう。

食べ物で気を付けることは、出荷制限がかかっているものや高濃度の放射能が検出されることの多い食べ物を避ける・産地を選ぶなどで、できるだけ体内に取り込まないようにしましょう。

また、これからできることとしては、無用な被ばくを避けるということが重要です。レントゲンや CTスキャンにしても、検査を受ける際は、本当に必要かどうかをよくお医者さんと相談しましょう。

簡易的な放射線の低減方法として、水による遮蔽は有効です。10cmほどの水は、Cs137のガンマ線のエネルギーを 60%ほど少なくします。ペットボトルの水などを屋内の線量の高いところの壁に並べるといった 方法を取ることもできます。

室内の掃除方法としては、水拭きが有効です。外から泥や埃を室内に持ち込まないように、気を付けましょう。(泥のついた靴などは家の外で脱ぐなど。)

Q15 郡山で、個人の積算線量計 (ガラスバッジ )は手に入りますか?

ネット通販などで個人線量計(積算線量を記録するもの)が手に入ります。また、福島県内にはガラスバッジなど、積算線量計を配布している自治体もありますから、市に連絡して確認してみましょう。

個人線量計の使用で気を付けることがあります。一方向からの放射線照射を想定して作られていますので、体に密着している場合には、背面からの照射が 20%~ 50%少なく見積もられると考えられています。ですので、測定結果の数値が 2~ 3割少なくなることを理解したうえで、被曝線量の目安として使用することが望ましいでしょう。

Q16 ガイガーカウンターで正しい測定をするためには、地面からどのくらいの高さで測ればいいのですか? また、ガイガーカウンターは壊れやすいと聞きましたがそれはどの程度ですか?

空間線量計(ガイガーカウンター、NaIシンチレーションカウンターのどちらも)で測定するさいは、地上1mで測定を行います。空間線量とその場で個人が受ける線量はおおよそ同じです。それに対して、年齢層や性別などに応じたリスク係数を用いて、ガンの発症リスクの目安とします。

ガイガーカウンターは、ガイガー管と呼ばれるガラスの管にガスを封入した検出器ですので、落とすと割れます。

Q17 今、土壌汚染を測定する方が正しい値といわれていますが、空間線量測定した値との違いは、どういう意味を持ちますか?

土壌汚染の測定と空間線量の測定はその目的に応じて行われますので、どちらが正しいということはありません。土壌汚染の測定では、土壌に含まれる放射能の量を測定するのに対して、空間線量の測定は、測定する場所における人体に対する影響の目安を知るために行われます。 土壌汚染については、1キロあたり○ベクレルという単位であれば、サンプルを採取した地点の放射能量がわかります。また平均的に同じ濃度で汚染されている付近の目安とする場合は、1平方メートル○ベクレルという単位であらわすことが一般的です。
空間線量は、人体に対する影響を知るために用いられるシーベルトという単位を用います。その付近一帯の放射性物質から放出されるガンマ線の量を測定します。
ガンマ線は空気中では、弱くなりながら、70メートル以上飛びます。

Q18 『爆発当初、郡山の水道水から放射性ヨウ素が検出された』……この時、給水車から配られた水にも入っていた可能性があったと思うのですが、その時の内部被ばくの可能性について、教えてください。

事故初期の主な内部被ばくの経路は、呼吸によるものと、飲食物を通したものが大半になります。プルーム(放射能雲)が通過している最中や、空気中に放射性物質が浮遊しているあいだに呼吸をすると、体内に取り込まれます。また、水・飲食物が汚染されていた場合は、飲む・食べることによって体内に取り込まれます。

放射性ヨウ素は主に甲状腺に集まり、そこでベータ線とガンマ線を放出して細胞を傷つけて、甲状腺がん、甲状腺肥大、甲状腺機能亢進、機能低下、などの病気の原因になります。

Q19 『放射線は笑っている人には影響が少ない』という科学者がいますが、本当に精神的にナイーブな人が影響を受けやすいことがありますか?

放射線の影響と笑うことは直接的に関係ないと思います。笑うことで免疫力が高まるということや、ストレスによって免疫力が低下するといわれています。「チェルノブイリ事故の影響地域では、放射線よりストレスの影響で病気が増えた」という学者さんもいますが、証明されたものをみたことがありません。


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